活動内容 | 家屋の改修事業 |
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活動地域 | インド中央部・ノルゲリン難民キャンプ |
ノルゲリン難民キャンプはインド中央部に位置し、約1100人のチベット難民の方々が住んでいます。ここはデカン高原の温度差の激しい地域で、夏には気温が50℃近くまで上がり、雨期ともなれば集中豪雨も激しい所です。チベットからこの地に逃れてもうじき40年が経とうとしています。
過酷な環境のもと、泥壁と簡易な瓦で作られた家屋は老朽化し、今や崩壊の危機にあり、人々の生活を脅かしています。私たちは、この倒壊の恐れさえある家々を改修する事業を行うことにしました。
現在インドには約30ヶ所のチベット難民居留地があり約12万人の人々が暮らしています。我々が支援活動を行うインド中央部の「ノルゲリン居留地」は建築から40年近くになる家屋の璧や柱が老朽化し、もろくなって崩壊寸前のものが見受けられました。
また、蓄熱作用を利用するため璧を厚くしてあり、その自重がかなりあるため地盤のしっかりしていない場所では、地盤沈下による沈み込みが見られます。このため壁や柱の継ぎ目などに亀裂が生じ、危険な状態です。さらに熱帯特有のシロアリや害虫が家屋の老朽化に拍車をかけています(屋根の上に蟻塚ができている家もいくつか見受けられました)。
ノルゲリン居留地内には225戸の世帯がありますが、このうち特にいたみの激しい190戸について改修工事を行う事にしました。改修のために必要となる強化土ブロック、セメント瓦は居留地内で造ります。
瓦は長年の風雨により劣化し、ひびや損傷などができ、そこからしみ込んだ雨露が梁(はり)や横木を腐らせています。これらのいたんだ瓦や木材は再利用できるものはとっておきます。特に木材はインドでは大変貴重です。屋根の改修により雨漏りがなくなったことはもちろんですが、葺き替えの際、透明のガラス板を屋根にはめ込み「明かり採り」を作ったことで、部屋は格段に明るくなりました。
水が浸みてひびが入ったり、虫食いにより老朽化した璧は、上に乗っている屋根を一旦はずして取り壊します。新たな璧は今までの高さより約1メートルほど高くして屋根を乗せ直すことで、天井が高くなり、入り口付近の軒(のき)も高くなりました。また今までの壁の歪みや、それによる隙間などもなくなり、雨や風のみならず、蛇、サソリといった毒虫や害虫等からも身を守ることができるようになるのです。そして、これで壁の崩壊による危険性もなくなりました。
また、壁には大きな窓を取り付けました。今までは家屋内に太陽光線が入りにくく、部屋は埃っぽくジメジメして不衛生でした。そのためか、居留地は「結核」の罹患率が高かったのです。しかし、このように大きな窓を取り付けることで、風通しが良くなり、室内が日光消毒できることで環境の改善がなされ「結核」患者が減少することを期待しています。また今まで薄暗く陰鬱であった部屋は大変明るくなり、家族を大切にするチベットの人々にとっては、一家団欒に最適の場所となりました。
ここ40年というもの、居留地には全くと言ってよいほど支援の手が届いていませんでした。当初、家屋改修プロジェクトの調査段階において、「こんな田舎の片隅に支援など来るはずがない」と居留地内に懐疑的なうわさが流れた時もありました。調査のため村を歩いていても、はじめは冷ややかな目が向けられていました。
ところが、何回か調査訪問をするうちに、当会スタッフは大変な歓迎を受けることとなりました。例えば、結婚式の時でさえその貧しさ故に華美なセレモニーや宴会はほとんど行われることがないのに、何としても感謝の意を表したいと、レセプションが開かれたこともありました。