過疎化が進行するサトゥン難民居留地で
困難な水の確保を支援

活動内容飲料水提供事業
活動地域インド・ヒマーチャル・プラデーシュ州サトゥン難民居留地

人口300人の居留地の一番の問題「水」

 インド北部のヒマーチャル・プラデーシュ州にある「サトゥン難民居留地」は過疎化が進み、入植当時800人いた人口は300人まで減ってしまいました。居留地内にあった小学校も廃校となり、子供たちは居留地から3時間ほど離れたポンタという町の寄宿舎にあずけられ、親子離ればなれの生活を強いられています。そのサトゥン居留地で一番窮していた問題が飲み水の確保です。

 サトゥン居留地はその敷地が大変狭く、農耕用の土地を持ちません。また大都市近くの居留地なら商売や出稼ぎにより何らかの収入を得る方法もありますが、辺境の地であるサトゥンではその方法もありません。若者たちはサトゥン居留地に希望を見出せず、その多くが離れていき、サトゥンは過疎化の一途をたどっています。居留地に残された老人達の頼りは中央政府からの支援のみという状況です。
 疲弊していく居留地には多数の問題が出てきていますが、中でも大きな問題は建物や設備の老朽化による弊害です。今回当会がサトゥン居留地で取り組んでいるのは「飲料水や生活用水確保」のプロジェクトです。

村にたった4ヶ所の給水ポンプも老朽化と節水により満足に使えない状況

 生活用水は居住地域より500㍍ほど離れた湧き水をディーゼルポンプで汲み上げ(高低差200㍍)、10トンの給水タンクに貯水して利用していました。しかしこのポンプは劣化して吸水能力が落ち、以前は1時間で満タンになっていたタンクが、今ではその倍の2時間掛かるようになってしまいました。節水のため給水は朝・夜の2回2時間づつ、つまり1日4時間に制限されていました。しかも村の全戸(と言っても37世帯)に水道が引かれているわけではなく、給水所は村に4ヶ所しかなく、私たちが訪れた時も生活用水の確保のため給水時間前には蛇口の前に列ができる状態でした。

水道設備を完備することで水汲みという毎日の過酷な労働から開放

 今回の支援事業ではディーゼルポンプとプラスティックの大型タンクを購入し、新たに給水塔を作って(高さ5㍍)全家庭にパイプを引き、水道設備を完備しました。高齢者が全体の60%を越すこのキャンプでは、これまでの給水所までの水くみは過酷な労働となっていました。今後はその重労働から解放され、衛生的な生活が送れるようになりました。
 チベット難民の限界集落ともいうべきサトゥン難民キャンプですが、まずは飲み水や生活用水の確保が容易になったことで、高齢の住民達は一安心というところです。しかし今後も何かと支援の手を差し延べていかなければならないと考えています。